クラッチ操作はもう趣味の世界か




弟が清水の舞台から飛び降りて注文したゲトラグ製6速MT(Manual Transmission/マニュアル/手動変速機)のミニクーパーSが3ヶ月待ちでやっとこさ上陸した。


サンルーフという工場のラインでしか取り付けられないオプションを頼んだのもあるが、日本で売れるのがほとんどオートマ(AT/Automatic Transmission/自動変速機)で、そもそもマニュアルの割り当てが少ないのが遅れる主な原因だという。


日本という市場では9割方オートマしか売れないが、逆にこのクルマ(というかすべてのクルマ)の発祥地ヨーロッパではマニュアル仕様が9割を占める。国土のせせこましさ、法定速度、道の狭さ、起伏、人口密度、ガソリン代と燃費、平均的な運転技術の差などすべてが理由だが、特にミニのようなコンパクトクラスはマニュアルが当り前だ。


仕組みが単純だから、壊れてもオートマに比べれば安く修理でき、重量が軽くギア段数がかせげるので燃費も良く、エンジンの性能をフルに使えるから力がなくても速く走らせられるのがマニュアルの特徴だから、合理主義のヨーロッパで根強いのもうなずける。クラッチが難点とよく言うけど、使っているうちに考えなくても体が覚えるので問題はない。渋滞はたしかに大変だ。


クラッチ操作が死ぬほど嫌なのか、毎日50キロの渋滞にはまるのか、マツダMX−5(ロードスター)の対抗馬として誕生した、ベンツのSLKやBMWのZ4といった背の低いスポーツカーですら日本では恥ずかしげもなくオートマで乗られ、常日頃から嘆かわしく思っていたものだが、ミニまでもがほとんどオートマと聞いて軽くめまいを覚えた。


くどくどと分別くさいことを言いたかないけど、やい日本人、趣味性が高ければ高いだけ、その対象の精神性をくみ取るべきではないのか。ダブルクラッチやヒール・アンド・トゥをやれとは言わない。でもはっきり言って、オートマで乗るならスポーツカーやミニである必要なぞないだろう。サー・アレック・イシゴニスのぼやきが聞こえてきそうだ。


ただペダル踏めば走るクルマなんてどこぞのミニバンとかカローラとか遊園地のゴーカートで十分満たされると私は愚考いたします。